大気の今 悲しみ

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朝になった。又早く目覚めちゃったみたいだ。昨日貰った雑誌を見てたらコーラが飲みたくなった。車いすじゃなくて歩いて、販売機の所まで行き、ロング巻を1本買ってベッドに戻った。もったいないのでゴクゴクは飲まない。雑誌を見ながら、ちびりちびり飲んだんだ。思ったより早い時間にご飯が出てきた。今回も御粥ではない。旅館で出て来る朝ごはんに似ている。これに納豆でもあればいいのにな。後おみそ汁もモット熱い方が良いや。でも仕方ないか、此処は病院だし。

ご飯がかたずけられて、看護婦さんたちがバタバタと歩き始めてきて、いよいよ病院は本格的な朝を向かえたみたいだ。端の人から順番に検温と血圧を測られている。昨日より僕は周りが見廻せるようになってきた。ぼくの番が来た。「川口さん、おはようございます。どう調子は?」。。。。。。看護婦さんは少しキレた様に「昨日より調子は良いの、悪いの?」とキツく言ってきたので言ってきたの僕はノートを出して「変わらないよ!」と書いて見せた。そしたら看護婦さんは「ああ、そうだった。ごめんね、川口さん」と急に態度を変えてきた。ふんだ!

車いすで移動して、昨日の先生と問診をした。先生はカルテなのかパソコンの画面を観ながら、昨日の段階で発音練習の効果が早くも出てきた様だね。昨日の担当者が言っていた様にやりすぎても間違って筋肉が覚えてしまうので、焦らずにじっくり練習して行こうね。「あ」、と「え」が昨日言えたみたいだから、このおさらいをして、今週は「はい」と「「いいえ」が言えるか、それに近い様にして行こうね。

「それから、あと2,3日は車いすだけど、その後は歩行練習も始めようね。」その話を聞いてぼくは嬉しくてにこっと笑った。「お、笑えたね。表情も戻り出して来たね。いいよ、川口さん。若い分だけ回復が速いね。午後も発声練習はやろうね。メンタルは今日は無しで良いからね。はいの「は」が未だ難しいかも知れないけど、いいえはかなり似た発音は早めに出来るようになるからね。がんばってね。じゃあまた明日。」先生はそう言った。どうやら回復に向かっていい方向に向かっているらしい。少しだけ嬉しくなった。

でも、家族の事は言わなかったな。未だ集中治療室で動けないのかなぁ。そこが心配だなぁ。明日先生に聞いて見よう。

病室に戻ってまた雑誌を見る。少しお腹が減って来たなぁ。お昼ご飯は未だかなぁ。

そこに吉田さんが入って来た。おばさんを連れて来たみたいだ。あのおばさん、誰だっけ?何か顔が怖い。

やあ、大樹君。さっきドクターの聞いて来たよ、簡単な発音の練習を始めたんだってね。それから表情の一部も回復に向かってるって聞いたよ。良かったじゃないか。この調子で頑張ろうね。

今日はおばさんにも来てもらったよ、中板橋からね。覚えてる、お父さんの弟さんの奥様の秋子さんだ。「秋子さん、大樹君は未だ記憶が戻っていないんです。それに今は話せない。昨日から話す練習を始めた所なんです。」

「大樹~!!大変だったねぇ。みんな死んじゃうなんてあんまりだよねぇ。でもねぇ、お父さんの会社がお葬式の手配をしてるから心配ないよ~!!保険金もたっぷり出るからねぇ~~!!」

僕はノートにこいつ何言ってんの?と書いて吉田さんに見せた。吉田さんがくしゃくしゃな顔をして、おばさんに言った。

「秋子さん、事前にあれほど未だ言わないで下さいと口を酸っぱくして言って、了解してもらったのにいきなり何て事言うんですか?大樹君の病状からドクターにもその話はしないでくれって、さっき言われたばかりじゃないですか?貴方、一体何しに来たんですか?」

「え?何言ってんのよ、テレビであれだけどのチャンネルでもやってるのに、大樹が知らない訳無いじゃないですか?貴方こそ何言ってんですか?」

「此処にはテレビが無いんですよ、心療内科ですからね。新聞も鏡も自殺の原因になりますから無いんですよ。ですからさっきお話して納得して貰ったのに、いざ口を開けば、言っちゃいけない事のオンパレードじゃないですか。全くどういう神経してたらそんな口が利けるんですか?」

「じゃあ、私は何のために来たのよ。お葬式の話と保険金の話をしに来たんでしょう。そうでなければ、大樹なんかの為にわざわざ仕事休んでこんな田舎迄来ないわよ!!」

僕は2人の会話から大体わかった。ノートに書いて吉田さんに見せた。

「この人には2度と会いたくない。返せ!!」

吉田さんは苦しそうな表情を浮かべ「判ったよ。この人はいて貰ってはダメだ。帰って貰う。直ぐ帰って貰う。それでいいかい大樹君。その後、私と話そう、そうしてくれないかい?」

僕はノートにOKと書いた。

吉田さんは秋子と名乗るこの人に、「お帰り下さい、あなたが全てをダメにしたのです。今後我々警察も貴方に協力をお願いしません。直ぐお帰り下さい。早くお帰り下さい。もう何も話さないで下さい。なにか話せば口にガムテープを貼ってパトカーで駅まで連れて行きますからね。早くお帰り下さい、え、帰りは送って貰えないのかって?ええ、送りませんよ、貴方は言葉の暴力を私の目の前で振るったのです。徒歩でも何でもお帰り下さい。勿論、神奈川県警だけでなく、警視庁にもこの件は伝えます。私は貴方を許せませんよ。」とこう言った。まるでテレビで見るドラマのようだった。つまり吉田さんは正義でこの親戚のおばさんは悪みたいだ。なんとなく判った。

おばさんが出て行ったらお昼ごはんが出てきた。吉田さんはまずご飯を食べてね。詳しい事は食べた後全部、今判っている事を話すからね。といって席を外した。ぼくは出てきたご飯を出来るだけ早く食べた。

御飯が下がってから少しして、吉田さんが戻って来た。さっきの苦悶の表情はもうない。少し長くなるけど順を追って話すからね。いいかい?僕は頷いた。

「事故の後、3人共この病院に搬入されたんだけど、3人共危険な状態だったんだ。おかあさんと、お父さんはもう死亡状態で蘇生の処置をしたのだが、どうしても無理だったんだ。妹さんは僅かだが生存できる可能性があったのだが、首の骨が完全に折れていて脳に血が行かなかったんだ。延命治療を全力でしたんだが、2日後に亡くなった。」

「大樹君に3人共集中治療室に言ったのは嘘ではないんだよ、それはね、お父さんもおかあさんも死後の臓器提供の欄にサインがあったからなんだよ。それで、お父さんの臓器提供で3人の手術が決まり、おかぁさんの臓器提供で6人の手術が決まったんだ。それで、手術となったのだが、だから直ぐに霊安室と亡くなった事を言わないで、ドナー提供の手術が全部成功したと報告を受ける迄、君に報告しなかったんだ。此処までは判ったかい。」

僕は手で丸をした。

「つまり、3人共に亡くなった訳だが9人の人が助かったんだ。妹さんは特異のアレルギーが複数ある体質だったので誰も適合者がいなかったんだよ。」

「事故の原因はトラック運転手の過剰な勤務が原因の居眠り運転である事が判明したし、この件で遺族の君に慰謝料が出る。それにお父さんが入っていた生命保険のお金も入る。しばらく、お金の心配はしなくても良いけど、お父さんの会社がお葬式を今度の土曜日に執り行う事になった、君も出るかね?」

僕はノートに出るけど、さっきのおばさんは出さないでくれ!と大きな文字で書いて吉田さんに見せた。

 

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