大樹の今 失声症

未分類
Google 翻訳(jetpack)

次の日の朝、病室で目を覚ました。何時なのか判らないや。ああ、入院したんだったよな。お父さんやお母さんや妹の緑はどうなってんだろう?昨日の警官さんの話だと、手術の後、確かICU(集中治療室)に入って麻酔が切れる迄話せないって、聞いちゃったから未だ会えないんだろうか?ああ、そうだ、僕は声が出なくなって入院したんだっけ。少し声を出すのを試したいな、周りを見回すと、誰か他の人もいるみたいだし、トイレに行っておしっこして、それから試してみよう。

病室を出ても誰にも会わなかった。ということは未だ朝早いのかな?廊下にトイレのマークがあったから、そこに向かって歩いて行った。おしっこをして手を洗って、何となく声を出してみた。あぅっ。未だ出ないや。少し長い音は出るかな?よし今度はあ~~~~って言ってみよう。ぁ~。ダメだ。未だ治ってないや。しかたない後で又、お医者さんに会うだろうから、その時に又メモで書いて渡して治してもらおう。

トイレの帰りに病室の周りを1周してみた。なんとなく自分のいる所の構造を知りたかったんだ。エレベーターの前に、看護婦さんがいた。時計もあったんで時間が判った。まだ6時半だ。何して時間を潰そうか?もう少し寝るかな。それしかないや。そうしよう。ベッドに戻って、また横になった。

おとうさんが一番酷そうだったけど、どれ位の重症なんだろう?お母さんはどうなんだろう。エアバッグが出ていたから、頭は強く打っていないはずなんだけどなぁ?緑もぐったりしたままだったし、後で病院の先生に聞いて見よう。

8時を過ぎて朝ごはんが出てきた。味が薄くてまずいや。声が出ないだけなのになんで御粥なんだろう?納豆とかノリとか魚の焼いたとかは出ないのかなぁ?

御飯が済んだら、なんか甘いモノが飲みたくなった。確かロビーに自販機があったからコーラでも買って飲もう。

9時を過ぎたら、昨日の親切な警官のおじさんがスーツのおじさんと一緒に入ってきた。やぁ、大樹君、おはよう。休めましたか?と聞かれたのでとっさにお辞儀をした。

今日はね、交通課の刑事さんを紹介するね。こちらは交通課の吉田巡査部長さんで、吉田さんで良いよ。後ね、大学ノートを買って来たから、言いたい事や、質問の順番を確認するのに持って来たからね。未だ話せないけど、大樹君は時期に良くなると思うから、それまではこれで連絡を取り合おうね。

先ず、連絡先の中板橋の親戚の人は、もうじき連絡が取れると思うけど、その親戚の人の苗字も川口さんで良いの?僕は、お辞儀した。名前も覚えている?首を横に振って、ノートに今は思い出せないと書いた。そうかい、判った。本籍地から辿れるから直に判るよ。もうすぐ診察の時間になるだろうから、おじさんも立ち会うね。そしてお医者さんに詳しく話してなるべく早く治してもらおうね。

僕は何時までここにいる事になるの?とノートに書いて吉田さんに見せた。吉田さんはそれは今は判らないよ。何か不便なことがあるの?食事の味が薄い?それは病院だからしょうがないよ。え、御粥は嫌だ?そうだよねぇ、内臓が悪い訳じゃないんだからね。後でお医者さんに言ってあげて、なるべく健康な人に近い食事にしてもらえる様に頼んであげるからね。家族の様子が知りたい?そうだろうねぇ、だけど集中治療室と言う所は家族も入れない所なんだよ。後で様子を聞いてきてあげるからね。

看護婦さんが来て、体温と脈拍を調べに来た。声が出ないだけなのに何でそんなものを調べるのか判らないけど、きっと他の入院患者と一緒の扱い何だろうな。吉田さんに病人に見られてるのかな?ってノートに書いたら苦笑いをしながら、声が出なくなった原因が他にも無いのか調べているのかも知れないねと言っていた。

診察の時に僕は車いすに乗せられて診察室迄連れて行かれた。僕は吉田さんを見て、怒った顔を見せてみたけど、吉田さんは手でまぁまぁのポーズを取った。心と体のバランスを取る為なんじゃないかと言っていた。

診察室に連れて行かれた僕は、お医者さんに色々聞かれた。ふん!平気だよ。吉田さんからもらったノートがあるからね。お医者さんは冷静そうに僕の事を観察しながら、質問をしてきたけど、僕は逆に質問した。

病人じゃないのにどうして御飯が御粥なんだよ。とか、歩けるのに何で車いすなんだよ、とかノートに書いて見せた。その様子を先生は観察しながら、じゃあ、食事のメニューは一般人のそれにかえるからね。と言ってくれた。車いすは、心のバランスを失った人の中には真っすぐ歩けなくなる事もあるからだと答えた。2,3日様子を見て、体のバランスが取れると判断出来たら歩いて移動できるようにしてあげるからねと、まるで僕の事を病人の様に言った。

先生は僕の事を、僕の症状の事を失声症といった。治療は薬とカウンセリングと発声練習だとざっくりと教えてくれて、お昼のご飯の後は薬を飲んで、午後はカウンセリングをしましょうと言った。

僕は、そんな事より家族の事を知りたかったのでノートに書いて見せたら、未だ集中治療室でこん睡状態だから、説明出来ないんだよと言われた。

午前中の診療はそれで終わってまた車いすで病室に戻った。

お昼のご飯から普通の定食みたいなのに変わっていた。味が薄いがおかゆよりましだ。

御飯の後、吉田さんがまた来て、親せきの人が見つかって明日こっちにおばさんが来るそうだ。と教えてくれた。僕は首を縦に振って頷き、判った旨を伝えたかった。吉田さんは無いか必要なものは無いかい?と聞いて来たので僕のスマホとノートに書いた。吉田さんは今君のスマホは証拠として、警察で事故の前後の事を調べているんだ。君のだけじゃなくて、家族のモノも事故の前後の事を調べているので、それが終わったら君の分だけ先に戻す様に言ってあげるから、もう少し辛抱してね。と言われた。

僕はそういわれれば、何となく理解できたのでじゃあ出来るだけ早く返してね。とノートに書いた。代わりと言っては何だけどね、と言いながら、持ってた袋の中から漫画と雑誌を3冊取り出して、ちょっと古いけどこれでも観て時間を潰してね。午後から先生が言っていたカウンセリングできっかけを作って早く良くなってね。と言ってくれたので、僕はありがとうとノートに書いた。

昼過ぎの診察ではさっきとは違う先生と診察室で、又最初から話すのかとうんざりしていたのだけど、そんな事は一切なく、大樹君は事故の前は普通に話せていたんよとね?と聞かれたので、ノートにそうだ。と書いた。そうなんだね。じゃぁ事故を目撃した後、上手く話せなくなったってことで良いのかな?首を縦にして頷いた。先生はそれは大きなショックだったでしょう、話せなくなったって仕方ないよ。忘れようとしても直ぐに解決できる問題じゃないから、発生の練習を少しやろうね。と言ってくれた。僕は頷いた。吉田さんも優しく先生の言うとおりだよ。発声の練習を直ぐに始めようよ、若い分早く始めた方が速く良くなると思うんだ。そうしてね。と言ってくれたんで、そのままリハビリ室に案内された。

若い男の先生が、君が大樹君だね。もう聞いているから、今日は、一番初歩の練習を2つだけしようね。と言われた。何だ2つだけで良いのかと思ったので早速やってみようと思った。

先生は、ホワイトボードに大きく2つだけ書いた。「まーーー」と「めーーー」だけだった。先生は実はこれが、発声の基本で、アイドルとか目指している人も此処から始めているんだよ。と教えてくれた。これがちゃんと言える様になれば、どんどん進歩するからね。と言った。

そうか、アイドルも此処から始めるのかと何故だか納得が出来たのでやってみた。ぁーとぇーしか言えなかったが最初にしては上出来だよと先生は言った。もう一度、やってみた。ぁー、ぇーまだ言えない、何度もやろうよ。急がない方が良いんだよ。と言われたのでやってみた。

何回やったのだろうか、何回先生は、急ぐと筋肉が間違って覚えるから今日はここまでで、明日またやろうね。小さな声だけどまーーの中のぁーは言えるから慣れればもっと上手くなるよ。実はタレントさんなんかでも出来ない人が結構いるんだ。めーーの中のぇーも言えてたから、後は筋肉が間違って覚えないように反復練習をすればいいんだと。

明日もやろうねと言って、今日の分の診察は終わった。病室に戻ると明日は親戚の方を連れて来るからね。と言って帰っていった。

コメント